要 約
被害者に犯行の様子を撮影録画したことを知らせて、被害者が捜査機関に被告人の処罰を求めることを断念させ、刑事責任の追及を免れようとするために、強姦及び強制わいせつの犯行の様子を被害者に気付かれないように撮影し、デジタルビデオカセットに録画した場合、当該デジタルビデオカセットは、供用物件(刑法19条1項2号)に当たる。
主 文
本件上告を棄却する。
当審における未決勾留日数中360日を本刑に算入する。
理 由
弁護人前田裕司、同谷口渉及び同金丸祥子並びに被告人本人の各上告趣意は、いずれも事実誤認、単なる法令違反の主張であって、刑訴法405条※1の上告理由に当たらない。
なお、所論に鑑み、職権で判断する。
原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば、被告人は、本件強姦1件及び強制わいせつ3件の犯行の様子を被害者に気付かれないように撮影しデジタルビデオカセット4本(以下「本件デジタルビデオカセット」という。)に録画したところ、被告人がこのような隠し撮りをしたのは、被害者にそれぞれその犯行の様子を撮影録画したことを知らせて、捜査機関に被告人の処罰を求めることを断念させ、刑事責任の追及を免れようとしたためであると認められる。以上の事実関係によれば、本件デジタルビデオカセットは、刑法19条1項2号※2にいう「犯罪行為の用に供した物」に該当し、これを没収することができると解するのが相当である。
したがって,刑法19条1項2号、2項本文※2により、本件デジタルビデオカセットを没収する旨の言渡しをした第1審判決を是認した原判断は、正当である。
よって、刑訴法414条※3、386条1項3号※4、刑法21条※5により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
※1 刑訴法405条
高等裁判所がした第1審又は第2審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。
1号
憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。
2号
最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
3号
最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
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※2 刑法19条1項2号、2項本文(没収)
1項
次に掲げる物は、没収することができる。
2号
犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
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2項
没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。
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※3 刑訴法414条
前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。
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※4 刑訴法386条1項3号
左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。
3号
控訴趣意書に記載された控訴の申立の理由が、明らかに第377条乃至第382条及び第383条に規定する事由に該当しないとき。
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※5 刑法21条(未決勾留日数の本刑算入)
未決勾留の日数は、その全部又は一部を本刑に算入することができる。
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