憲法判例

judgment 憲法判例
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総 論

包括的基本権

プライバシー権

  • 最判昭56.4.14(前科照会事件) 昭和52年(オ)第323号:損害賠償等 民集35巻3号620頁
    前科及び犯罪経歴は人の名誉・信用に直接関わる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する一方で、前科等の有無が訴訟等の重要な争点となっていて、市区町村長に照会して回答を得るのでなければ他に立証方法がないような場合には、裁判所から前科等の照会を受けた市区町村長は、これに応じて前科等につき回答をすることができるが、弁護士法の規定に基づく弁護士会からの照会に漫然と応じて犯罪の種類・軽重を問わず、前科等の全てを報告することは、公権力の違法な行使に当たる。
  • 最判平6.2.8(ノンフィクション「逆転」事件) 平成1年(オ)第1649号: 慰藉料 民集48巻2号149頁
    ある者が刑事事件について公訴提起されて有罪判決を受け、服役したという事実は、その者の名誉あるいは信用に直接に関わる事項であるから、その者は、みだりに前科等に関わる事実を公表されないことにつき、法的保護に値する利益を有し、また、有罪判決を受けた後あるいは服役を終えた後においては、一市民として社会に復帰することが期待されるので、その者は、前科等に関わる事実の公表によって、新しく形成している社会生活の平穏を害されその更生を妨げられない利益を有する。
    ある者の前科等に関わる事実が著作物で実名を使用して公表された場合に、その者のその後の生活状況、当該刑事事件それ自体の歴史的又は社会的な意義その者の事件における当事者としての重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性を併せて判断し、右の前科等に関わる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するときは、その者は、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる。

精神的自由権

思想・良心の自由

表現の自由

  • 最大判昭24.5.18 昭和23年(れ)第1308号:食糧緊急措置令違反 刑集3巻6号839頁
    国民は、憲法が保障する基本的人権を濫用してはならず、常に公共の福祉のために利用する責任を負う(憲法12条)ので、言論の自由といえども絶対無制約ではなく、公共の福祉による制約を受ける。
  • 最大判昭25.9.27 昭和24年(れ)第2591号:教育委員会委員選挙罰則違反 刑集4巻9号1799頁
    憲法21条は絶対無制限の言論の自由を保障しているのではなく、公共の福祉のためその時、所、方法等について合理的制限が存することを容認しているものといえるから、選挙の公正を期するため戸別訪問を禁止した結果として、言論自由の制限をもたらすことがあったしても、憲法に違反するものということはできない。
  • 最大判昭44.6.25(夕刊和歌山時事事件) 昭和41年(あ)第2472号:名誉毀損 刑集23巻7号975頁
    刑法230条の2の規定は、人格権としての個人の名誉の保護と、憲法21条による正当な言論の保障との調和をはかったものであり、両者間の調和と均衡を考慮すると、刑法230条の2第1項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料・根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損罪(刑法230条1項)は成立しない。
    真実性の証明の方法は、厳格な証明による。
  • 最大決昭44.11.26(博多駅テレビフィルム提出命令事件) 昭和44年(し)第68号:取材フィルム提出命令に対する抗告棄却決定に対する特別抗告 刑集23巻11号1490頁
    報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障の下にあり、報道のための取材の自由も、同条の精神に照らし、十分尊重に値する。
    報道機関の取材フィルムに対する提出命令が許容されるか否かは、審判の対象とされている犯罪の性質、態様、軽重及び取材したものの証拠としての価値、公正な刑事裁判を実現するに当たっての必要性の有無を考慮するとともに、これによって報道機関の取材の自由が妨げられる程度、これが報道の自由に及ぼす影響の度合その他諸般の事情を比較衡量して決せられるべきであり、これを刑事裁判の証拠として使用することがやむを得ないと認められる場合でも、それによって受ける報道機関の不利益が必要な限度を超えないように配慮されなければならない。
  • 最判昭56.4.16(月刊ペン事件) 昭和55年(あ)第273号:名誉毀損 刑集35巻3号84頁
    私人の私生活上の行状であっても、その携わる社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによっては、その社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として、「公共の利害に関する事実」(刑法230条の2第1項)に当たり得る。
    「公共の利害に関する事実」(刑法230条の2第1項)に当たるか否かは、摘示された事実自体の内容・性質に照らして客観的に判断されるべきであり、これを摘示する際の表現方法や事実調査の程度などは、公益目的の有無の認定等に関して考慮されるべきことがらであって、摘示された事実の公共性の有無の判断を左右するものではない。

人身の自由

被告人の権利

社会権

労働基本権

  • 最大判昭24.5.18 昭和22年(れ)第39号:脅迫 刑集3巻6号772頁
    勤労者以外の団体又は個人の単なる集合にすぎないものに対してまで、憲法28条の労働基本権の保障は及ばない。また、一般民衆は、法規その他公序良俗に反しない限度で大衆運動を行うことができるが、そうだからといってその運動に関する行為であれば常に刑法35条の正当行為として刑罰法令の適用が排除されるわけではない。
  • 最大判昭25.11.25(山田鋼業事件) 昭和23(れ)第1049号:窃盜 刑集4巻11号2257頁
    憲法は、勤労者に対して団結権、団体交渉権その他の団体行動権を保障するとともに、全ての国民に対して平等権、自由権、財産権等の基本的人権を保障しているのであるから、後者が前者に対して絶対的優位を有することを認めておらず、一般的基本的人権と労働者の権利との調和を期待しているのであるから、この調和を破らないことが、争議権の正当性の限界となる。
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