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刑法では、暴行という言葉は、暴行罪(刑法208条)に限らず様々な犯罪で使われています。
例えば、公務執行妨害罪(刑法95条1項)、強制性交等罪(同法177条)、強盗罪(同法236条1項)などです。
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
それぞれ、同じ暴行という言葉を用いてはいますが、その意味するところ(=暴行の対象や程度)は異なります。
そこで、暴行罪は具体的にどのような対象にどのような程度の暴行を加えれば成立するのか、他の犯罪における暴行とはどのように違うのか等について解説します。
まずは、条文を確認します。
1 意 義
暴行罪を規定している刑法208条を見ると、暴行罪とは、人に傷害の結果を生じさせずに暴行を加えた場合に成立する犯罪であるということが分かります。
つまり、暴行罪とは、有形力(=物理力)による「傷害の結果を生じるに至らない身体に対する不法な攻撃」(西田典之著、橋爪隆補訂『刑法各論』第7版、弘文堂、2018年、p.39)を処罰する犯罪をいいます。
暴行によって傷害の結果が生じた場合は、暴行罪ではなく傷害罪(刑法204条)が成立します。
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
なお、傷害罪は、有形的な方法(例えば、殴るなど)だけではなく、無形的な方法(例えば、毎日深夜に無言電話を何度も繰り返してノイローゼにさせるなど)によっても成立し、傷害罪と暴行罪とは、以下のような関係にあります。
方 法 | 傷害の結果発生の有無 | 罪 名 | 成 否 |
無形的な方法 | ○ | 暴行罪 | ✕ |
傷害罪 | ○ (傷害の結果発生について故意があることが必要) | ||
✕ | 暴行罪 | ✕ | |
傷害罪 | ✕ | ||
有形的な方法 | ○ | 暴行罪 | ✕ |
傷害罪 | ○ | ||
✕ | 暴行罪 | ○ | |
傷害罪 | ✕ |
したがって、暴行罪は、有形的な方法による「傷害未遂を処罰する補充的処罰規定としての機能」(井田良『講義刑法学・各論』第2版、有斐閣、2020年p.47)を持っています。
暴行罪の成否は、人に傷害の結果が生じない場合に問題となる。
2 保護法益
刑法に規定されている各犯罪は、一定の利益を守るために存在しています。したがって、刑法各論を学ぶ際には、まず最初に、各犯罪が何を守るために犯罪として刑法に規定されているのか、つまり保護法益を明らかにしておくことが大切です。なぜならば、各犯罪の保護法益をどのように捉えるかによって、各条文の文言の意味合い、つまり解釈が異なってくるからです。
では、暴行罪の保護法益は何なのかというと、人の身体の安全です。
暴行罪の保護法益は、人の身体の安全
3 主 体
暴行罪は、有形力を行使して人の身体を攻撃する行為を処罰する犯罪です。
そして、人の身体の安全を保護するためには、これを害する行為を行う者に制限を設ける理由は特にありません。
したがって、有形力を行使して人の身体を攻撃する行為を行った場合には、誰にでも暴行罪が成立し得ます。
なお、当然のことですが、有形力を行使して人の身体を攻撃するという行為の性質上、そのような行為を行う者は、自然的・物理的存在である必要があるので、自然人である個人である必要があり、観念的な存在である法人その他の団体は暴行罪の主体とはなり得ません。
暴行罪の主体は、自然人である個人
4 客 体
暴行罪は、有形力を行使して人の身体を攻撃する行為を処罰する犯罪で、保護法益は人の身体の安全なので、暴行罪の客体は人の身体です。
5 行 為
暴行罪の行為は、人に暴行を加えることです。
⑴ 刑法上の暴行
上述のように、刑法で暴行という言葉は、暴行罪に限らず様々な犯罪で用いられていて、それぞれその意味内容は異なります。
刑法上の暴行は、一般に不法な有形力の行使をいい、以下の4種に分類されます。
種 類 | 意 義 | 具体例 |
①最広義の暴行 | 人に対すると物に対するとを問わず、有形力の行使の全て | ・騒乱罪(刑法106条) ・多衆不解散罪(刑法107条) |
②広義の暴行 | 人に向けられた有形力の行使 (人の身体に対して加えられると物に対して加えられるとを問いません。) | ・公務執行妨害罪(刑法95条1項) ・職務強要罪、辞職強要罪(刑法95条2項) ・加重逃走罪(刑法98条) ・逃走援助罪(刑法100条2項) ・特別公務員暴行陵虐罪(刑法195条) ・強要罪(刑法223条1項) |
③狭義の暴行 | 人の身体に対する有形力の行使 | ・暴行罪(刑法208条) |
④最狭義の暴行 | 人の抵抗を著しく困難にする程度の人又は物に対する有形力の行使 | ・強制わいせつ罪(刑法176条) ・強制性交等罪(刑法177条) |
人の反抗を抑圧するに足りる人又は物に対する有形力の行使 | ・強盗罪(刑法236条) ・事後強盗罪(刑法238条) |
①から③は、暴行の対象による分類で、④は暴行の程度による分類です(大塚仁・河上和雄・中山善房・古田佑紀編『大コンメンタール刑法』第三版(第10巻)、青林書院、2021年、p.532、大谷實『刑法講義各論』新版第5版、成文堂、2019年、p.38参照)。
⑵ 暴行罪における暴行の意義
暴行罪の保護法益は人の身体の安全なので、暴行罪における暴行は狭義の暴行で、人の身体に対する有形力の行使をいいます(大判大11.1.24)。
典型的には、
- 殴る
- 蹴る
- 突く
- 引っ張る
といった行為が、これに該当します。
また、暴行は人に対する物理力の行使なので、いわゆる暴力の行使だけではなく、
- 音
- 光
- 電気
- 熱
- 冷気 など
のエネルギー作用による場合も含まれます。
例えば、
- 部屋を閉め切ったうえで、被害者の身辺で殊更に大太鼓やシンバルなどを連打して、被害者を意識朦朧とした気分にさせ、又は脳貧血を起こさせたりする程度にさせた場合(最判昭29.8.20)
- 携帯用拡声器を用いて耳元で大声を発する行為(大阪地判昭42.5.13)
は、音による暴行が認められます。

暴行罪における暴行は、狭義の暴行
ア 被害者の身体への接触の要否
暴行罪における暴行は、狭義の暴行で、人の身体に対する有形力の行使でなければなりませんが、暴行罪は、「傷害未遂罪としての性格と地位を有し※、そのかぎりで危険犯としての性格を肯定する」(西田典之著、橋爪隆補訂『刑法各論』第7版、弘文堂、2018年、p.41)ことができるので、攻撃が直接人の身体に接触しなくても成立します。
例えば、以下のような場合にも、暴行罪が成立し得ます。
- 驚かす目的で、被害者の数歩手前を狙って投石する行為(東京高判昭25.6.10)
- 被害者めがけて椅子を投げ付けたが当たらなかった場合(仙台高判昭30.12.8)
- 狭い4畳半の室内で、被害者を脅かす目的で日本刀の抜き身を数回振り回す行為(最決昭39.1.28)
- 嫌がらせのため並走中の自動車に幅寄せする行為(東京高判昭50.4.15)
- 並走中の自動車への幅寄せ、追越し、割り込み行為(東京高判平16.12.1)

暴行罪における暴行は、必ずしも人の身体に直接接触する必要はない。
イ 傷害の危険の要否
暴行罪を規定している刑法208条は、「人を傷害するに至らなかったとき」と規定しているので、暴行罪における暴行は、傷害の結果を生じさせる危険性がなければならないようにも考えられます。
しかし、判例・通説は、暴行罪における暴行は傷害の結果を生じさせる危険性がなくてもよく(大判昭8.4.15)、身体の安全が害されれば、傷害未遂とはいえなくても、暴行罪における暴行に当たるとしています。
したがって、以下のような場合にも、暴行罪が成立し得ます。
- 人の毛髪をカミソリで切断する行為(大判明45.6.20)
- 電車に乗ろうとする人の着衣をつかんで引っ張る行為(大判昭8.4.15)
- 食塩を振りかける行為(福岡高判昭46.10.11)

暴行罪における暴行は、必ずしも傷害の結果を生じさせる危険性がある必要はない。
ウ 違法性
人の身体に対する有形力の行使には、日常生活において適法に行われるものもあります。
例えば、
- 落とし物をした歩行者に追い付いて、肩に手を掛けて呼び止める場合
- 久しぶりにあった友人に、喜びのあまり抱き着く場合
などです。

これらの行為を、およそ人の身体に対する有形力の行使であるからといって、暴行罪に問うことはできません。
そこで、暴行罪における暴行は、不法な有形力の行使である必要があります。
そして、人の身体に対する有形力の行使が不法なものかどうかは、
- 行為の目的
- 行為当時の状況
- 行為の態様
- 被害者に与えた苦痛の有無・程度
などを総合して、社会生活上認められるものかどうかによって決められます(東京高判昭45.1.27)。
暴行罪における暴行は、不法なものでなければならない。
6 結 果
暴行罪は挙動犯なので(井田良『講義刑法学・各論』第2版、有斐閣、2020年、p.54参照)、人の身体に対して不法な有形力を行使すれば成立し、何らかの結果が発生することは必要ではありません。
暴行罪は挙動犯
7 主観的要件
暴行罪は故意犯なので、同罪が成立するためには、人の身体に対して有形力を行使することの認識・認容といった故意が必要となります。
例えば、不注意によって他人にぶつかったり、他人の足を踏んだりしても、暴行罪は成立しません(西田典之著、橋爪隆補訂『刑法各論』第7版、弘文堂、2018年、p.40参照)。
暴行罪は、暴行を加えたけれども、傷害の結果を生じさせなかった場合に成立するので、
- 暴行の故意による場合
- 傷害の故意で暴行を加えたが傷害の結果が発生しなかった場合
の2つの場合があります。
暴行罪の故意には、傷害の故意がある場合が含まれる。
8 未遂・既遂
暴行罪には、未遂を処罰する規定がないので、未遂は処罰されません(刑法44条)。
未遂を罰する場合は、各本条で定める。
暴行罪に未遂はない。
9 罪数・他罪との関係
⑴ 暴行罪の個数
暴行罪の保護法益は人の身体の安全で、身体の安全は人ごとに存在するので、被害者の数を基準として、つまり、被害者の数に応じた暴行罪が成立します。
暴行罪の個数は、被害者の数を基準とする。
⑵ 他罪との関係
ア 傷害罪との関係
暴行を加えた結果、被害者に傷害を負わせた場合は、傷害罪のみが成立します。
イ 暴行が構成要件要素となっている犯罪との関係
公務執行妨害罪(刑法95条1項)、騒乱罪(同法106条)、強制性交等罪(同法177条)、強盗罪(同法236条1項)など、暴行が構成要件要素となっている犯罪では、暴行罪の暴行に相当する行為がそれらの犯罪の手段として行われたときは、暴行行為はそれらの犯罪に吸収され、別に暴行罪は成立しません。
多衆で集合して暴行又は脅迫をした者は、騒乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
1号
首謀者は、1年以上10年以下の懲役又は禁錮に処する。
2号
他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。
3号
付和随行した者は、10万円以下の罰金に処する。
暴行罪と暴行を構成要件要素とする犯罪とは、吸収関係にある。
ウ 監禁罪との関係
暴行が監禁の手段としてなされた場合は、監禁罪(刑法220条)のみが成立します。
ただし、例えば、監禁中の被害者の言動に憤激して暴行を加えた場合のように、監禁とは別個の動機・目的に基づいて暴行を加えた場合は、監禁罪のほかに暴行罪も成立し、併合罪となります(最判昭28.11.27)。
暴行罪が監禁罪に吸収されるかは、暴行が監禁の手段としてなされたかどうかで決まる。
エ 脅迫罪との関係
暴行行為を行う場合には、脅迫行為を伴うことが多いですが、暴行罪のほかに脅迫罪(刑法222条)も成立するかどうかは、「脅迫行為ないしは脅迫内容が暴行に対して独立の意味を有するかどうかによって決せられ」(前田雅英・松本時夫・池田修・渡邊一弘・河村博・秋吉淳一郎・伊藤雅人・田野尻猛編『条解 刑法』第4版、弘文堂、2020年、p.626)ます。
1項
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2項
親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
具体的には、以下のようになります。
暴行罪のみが成立する場合 | ・暴行を加える旨を告知したうえで、殴打した場合(大判大15.6.15) など |
暴行罪のほかに脅迫罪も成立する場合 | ・殴打した後に、殺害を告げて拳銃で脅迫した場合(大判明44.11.13) ・殺すぞと脅迫した後に、殺意なく暴行を加えた場合(大判昭6.12.10) ・殴打した後に、川へ投げ込むと脅迫した場合(最判昭30.11.1) など |
脅迫の内容が暴行と異なる場合など、脅迫行為・内容が暴行に対して独立の意味を有する場合は、暴行罪と脅迫罪が共に成立する。
10 確認問題
暴行罪については一通り説明したので、試しに問題を解いてみましょう。
⑴ 平成13年度 (旧)司法試験 第二次試験 短答式試験 第45問
次のAからCまでは暴行罪における「暴行」の意義に関する見解であり、下記アからウまではいずれかの見解の説明であって、ⅠからⅢまでは暴行罪の成否が問題となる事例である。見解、それに対応する説明、その見解によれば暴行罪の成立が否定される事例の組合せとして正しいものは、後記1から5までのうちどれか。
【見解】
A 直接身体に加えられた不法な有形力の行使の場合、傷害の結果を生じさせる具体的危険を要しないが、直接身体に加えられない場合、その危険を要する。
B 直接身体に加えられた不法な有形力の行使に限られるが、傷害の結果を生じさせる具体的危険を要しない。
C 不法な有形力の行使が直接身体に加えられることは要しないが、有形力に傷害の結果を生じさせる具体的危険を要する。
【説明】
ア この見解は、暴行を傷害の前段階と位置付けるものであり、被害者に塩を振り掛ける行為は暴行から除かれることになる。
イ この見解は、暴行を類型に分けて二元的に理解するものであり、身体への接触を不要とする点につき、暴行罪の保護法益を身体の「安全」から「安全感」に拡張するものであると批判されている。
ウ この見解は、暴行罪も結果犯であって、被害者に有形力が及んだことを要求するものである。
【事例】
Ⅰ 甲は脅す目的で乙の数歩手前をねらって投石した。
Ⅱ 甲は乙につばを吐き掛けた。
Ⅲ 甲は狭い室内で乙を脅す目的をもって日本刀を振り回した。
1.AイⅡ-BアⅡ 2.AイⅢ-CアⅢ 3.BイⅠ-CアⅠ
法務省「旧司法試験第二次試験短答式試験問題」平成13年度問題
4.BウⅠ-CアⅡ 5.BウⅢ-CイⅡ
⑵ 解 説
見解と説明の組み合わせについて
アについて
アは、「暴行を傷害の前段階と位置付ける」と記述しています。
「前段階」というのは、言い方を変えれば、「未遂の段階」ということを意味すると解釈することができます。
そうすると、アの記述によれば、暴行罪における暴行は、傷害の結果を生じさせる危険を有するものでなければならないということができます。
このことは、後段の記述とも合致します。なぜならば、被害者に塩を振り掛ける行為は、被害者に傷害の結果を生じさせることはおよそ考えられないからです。
したがって、アは、暴行罪における暴行は、「(常に)有形力に傷害の結果を生じさせる具体的危険を要する」とするCと結び付くことになります。
イについて
イは、「暴行を類型に分けて二元的に理解するもの」と記述しています。
これは、暴行罪における暴行を、2つの場合に分けて考えているということを意味しています。
そのような見解を【見解】の中から探してみると、Aがこれに合致します。
なぜならば、Aは、暴行罪における暴行を、「直接身体に加えられた不法な有形力の行使の場合」と「直接身体に加えられない場合」の2つの場合に分けて考えているからです。
したがって、イは、Aと結び付くということになります。
ウについて
ウは、「被害者に有形力が及んだことを要求する」と記述しています。
これは、暴行罪における暴行は、直接人の身体に接触するような有形力でなければならないということを意味しています。
そのような見解を【見解】の中から探してみると、Bがこれに合致します。
なぜならば、Bは、「直接身体に加えられた不法な有形力の行使に限られる」と記述して、暴行罪における暴行は、直接人の身体に接触するような有形力でなければならないとしているからです。
したがって、ウはBと結び付くということになります。
見解と事例の組み合わせについて
Ⅰについて
Ⅰは、「乙の数歩手前をねらって投石した」と記述しています。
これは、甲による投石という暴行が、乙の身体に直接接触していないということを意味します。
また、人に向かって投石するという行為は、人に傷害の結果を生じさせる危険があるものといえます。
そうすると、
- 直接人の身体に接触しない場合は傷害の結果を生じさせる危険があることを要するとするAの見解
傷害の結果を生じさせる危険があるので、暴行罪が成立する。 - 直接人の身体に接触しなければならないとするBの見解
直接人の身体に接触していないので、暴行罪は成立しない。 - 直接人の身体に接触するか否かを問わず、傷害の結果を生じさせる危険があることを要するとするCの見解
傷害の結果を生じさせる危険があるので、暴行罪が成立する。
ということになります。
したがって、ⅠはBと結び付くということになります。
Ⅱについて
Ⅱは、「乙につばを吐き掛けた」と記述しています。
これは、甲のつばを吐き掛けるという暴行が、乙の身体に直接接触しているということを意味します。
もっとも、人の身体につばを吐き掛けるという行為は、およそ人に傷害の結果を生じさせる危険があるものとはいえません。
そうすると、
- 直接人の身体に接触しない場合は傷害の結果を生じさせる危険があることを要するとするAの見解
直接人の身体に接触しているので、傷害の結果が生じる危険がなくても、暴行罪が成立する。 - 直接人の身体に接触しなければならないとするBの見解
直接人の身体に接触しているので、暴行罪が成立する。 - 直接人の身体に接触するか否かを問わず、傷害の結果を生じさせる危険があることを要するとするCの見解
傷害の結果を生じさせる危険がないので、暴行罪は成立しない。
ということになります。
したがって、ⅡはCと結び付くということになります。
Ⅲについて
Ⅲは、「狭い室内で……脅す目的をもって日本刀を振り回した」と記述しています。
「脅す目的をもって」ということは、甲の日本刀を振り回すという暴行が、乙の身体に直接接触していないということを意味しています。
そして、狭い室内で日本刀を振り回すという行為は、その室内にいる人に傷害の結果を生じさせる危険があるものといえます。
そうすると、
- 直接人の身体に接触しない場合は傷害の結果を生じさせる危険があることを要するとするAの見解
傷害の結果を生じさせる危険があるので、暴行罪が成立する。 - 直接人の身体に接触しなければならないとするBの見解
直接人の身体に接触していないので、暴行罪は成立しない。 - 直接人の身体に接触するか否かを問わず、傷害の結果を生じさせる危険があることを要するとするCの見解
傷害の結果を生じさせる危険があるので、暴行罪が成立する。
ということになります。
したがって、ⅢはBと結び付くということになります。
⑶ 解 答
【見解】、【説明】、【事例】の組み合わせは、以下のようになります。
- A-イ-なし
- B-ウ-Ⅰ及びⅢ
- C-ア-Ⅱ
したがって、この問題の解答は、4ということになります。