刑法判例

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最決平19.7.2 平成18年(あ)第2664号:建造物侵入、業務妨害被告事件 刑集61巻5号379頁

現金自動預払機利用客のカードの暗証番号等を盗撮する目的で現金自動預払機が設置された銀行支店出張所に営業中に立ち入った場合、その立入りは同所の管理権者の意思に反するものであるから、立入りの外観が一般の現金自動預払機利用客と異なるものでなくても、建造物侵入罪が成立する。現金自動預払機利用客を、同人のカードの暗証番号等を盗撮するためのビデオカメラを設置した現金自動預払機に誘導する意図を秘して、その隣にある現金自動預払機を、あたかも入出金や振込等を行う一般の利用客のように装って適当な操作を繰り返しながら1時間30分間以上にわたって占拠し続けた行為は、偽計業務妨害罪に当たる。
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刑法を学習していくうえで必要となる重要判例をまとめています。判例は、原則としてそのまま引用していますが、読みやすくするため、以下のような修正を施しています。促音・拗音の表記になっていない箇所は、促音・拗音の表記に修正しています。漢数字は算用数字で表記するようにしています。適宜漢字にふりがなをふっています。適宜見出しをつけています。目次を付けています。要約を付けています。
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大判大15.3.24 大正14年(れ)第2138号:脅迫被告事件 刑集5巻117頁

名誉毀損罪又は侮辱罪の被害者となる者は特定した人又は人格を有する団体でなければならず、東京市民とか九州人というような漠然とした表示では名誉毀損罪又は侮辱罪は成立しない。
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最決平12.2.17 平成9年(あ)第324号:業務妨害被告事件 刑集54巻2号38頁

強制力を行使する権力的公務以外の公務は、偽計・威力業務妨害罪(刑法233後段、234条)の業務に当たる。
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最判昭53.6.29(長田電報局事件) 昭和51年(あ)第310号:公務執行妨害 刑集32巻4号816頁

① 公務執行妨害罪にいう職務には、広く公務員が取り扱う各種各様の事務の全てが含まれる。② 職務の性質によっては、その内容・職務執行の過程を個別的に分断して部分的にそれぞれの開始・終了を論ずることが不自然かつ不可能であって、ある程度継続した一連の職務として把握することが相当と考えられるものがあり、そのような職務の各執行が事実上一時的に中断したとしても、その状態が被告人の不法な目的を持った行動によって作出されたものである場合には、職務の執行は終了したものということはできない。③ 公務執行妨害罪の主観的成立要件としての職務執行中であることの認識があるというためには、行為者において公務員が職務行為の執行に当たっていることの認識があれば足り、具体的にいかなる内容の職務の執行中であるかまで認識することを要しない。
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最大判昭43.9.25 昭和41年(あ)第1257号:収賄、加重収賄、有印虚偽公文書作成、同行使 刑集22巻9号871頁

追徴額の算定基準は、没収対象であった物の授受・取得後に価額が増減したとしても、それは物の授受・取得とは別個の原因に基づいて生じたものなので、物の授受・取得当時の価額となる。
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最決平22.3.15 平成21年(あ)第360号:名誉毀損被告事件 刑集64巻2号1頁

行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて、確実な資料・根拠に照らして相当の理由があると認められるときに名誉毀損罪が成立しないことは、インターネットの個人利用者による表現行為の場合であっても、他の表現手段を利用した場合と同様であって、より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきではない。
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最決昭43.1.18 昭和42年(あ)第361号:名誉毀損、私文書偽造、同行使、公正証書原本不実記載、同行使 刑集22巻1号7頁

うわさの形で人の名誉を毀損する行為がなされた場合において、真実性の証明による免責(刑法230条の2)がなされるための証明の対象は、風評の存在自体ではなく、その内容をなす事実の存在である。
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最判平15.3.11 平成14年(あ)第1198号:信用毀損、業務妨害、窃盗被告事件 刑集57巻3号293頁

信用毀損罪(刑法233条前段)の保護法益である信用は、経済的側面における人の社会的評価をいい、これには、人の支払意思又は能力のほか、販売される商品の品質に対する社会的な信頼も含まれる。
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最判昭41.6.23 昭和37年(オ)第815号:名誉および信用毀損による損害賠償および慰藉料請求 民集20巻5号1118頁

民事上の不法行為である名誉毀損については、その行為が公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、その行為は違法性を欠き、不法行為は成立しない。もし、摘示された事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、故意若しくは過失がなく、不法行為は成立しない。衆議院議員選挙の立候補者の前科等に係る事実は、公共の利害に関する事実に当たる。