最決昭40.5.20 昭和39年(あ)第2484号:売春防止法違反 集刑155号771頁

judgment 刑法判例
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要 約

売春防止法13条2項によって懲役刑に併科すると定められた罰金刑は、刑罰であって没収又は追徴とはその性質を異にするから、被告人に罰金刑が併科された場合においても、罰金刑が併科された行為により取得した家賃相当額を報酬物件として刑法19条1項3号、19条の2によって追徴することができ、かつ、その際いわゆる適正賃料額を控除することを要しない。

主 文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

弁護人青山政雄の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であって刑訴法405条※1の上告理由に(あた)らない(売春防止法13条2項※2によって懲役刑に併科すると定められた罰金刑は、刑罰であって没収または追徴とはその性質を異にするから、被告人に罰金刑が併科された場合においても、右行為により取得した家賃相当額を刑法19条1項3号※3、19条の2※4によって追徴することができ、かつ、その際いわゆる適正賃料額を控除することを要しないとした原審の判断は相当である)。弁護人古賀光豊の上告趣意は、量刑不当の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同411条※5を適用すべきものとは認められない。

よって同414条※6、386条1項3号※7、181条1項本文※8により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。


※1 刑訴法405条
 高等裁判所がした第1審又は第2審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の(もうし)(たて)をすることができる。
1号
 憲法の違反があること又は憲法の解釈に(あやまり)があること。
2号
 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
3号
 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
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※2 売春防止法13条2項
 情を知って、前条の業に要する資金、土地又は建物を提供した者は、7年以下の懲役及び30万円以下の罰金に処する。
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※3 刑法19条1項3号(平成7年改正前)
1項
 左に記載したる物は之を没収することを得
3号
 犯罪行為より生じ(もし)くは之に()り得たる物又は犯罪行為の報酬として得たる物
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※4 刑法19条の2(平成7年改正前)
 前条第1項第3号及び第4号に記載したる物の全部又は一部を没収すること(あた)はざるときは(その)価額を追徴することを得
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※5 刑訴法411条
 上告裁判所は、第405条各号に規定する事由がない場合であっても、左の事由があって原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。
1号
 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。
2号
 刑の量定が(はなはだ)しく不当であること。
3号
 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。
4号
 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。
5号
 判決があった後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があったこと。
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※6 刑訴法414条
 前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。
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※7 刑訴法386条1項3号
 左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。
3号
 控訴趣意書に記載された控訴の申立の理由が、明らかに第377条乃至(ないし)第382条及び第383条に規定する事由に該当しないとき。
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※8 刑訴法181条1項本文
 刑の(いい)(わたし)をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。
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