最大判昭27.12.24 昭和25年(オ)第131号:不当処分取消並びに憲法擁護尊重義務履行等請求 民集6巻11号1214頁

judgment 刑事訴訟法判例
この記事は約3分で読めます。
Sponsored Link
Sponsored Link

要 約

告訴・告発・請求があっても、検察官は、公訴提起の義務を負わない。

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告理由1について

検察庁法14条但書に、法務総裁が検事総長の(ほか)検察官を指揮することができないというのは、個々の刑事々件の取調又は処分に関してのことであり、国の利害に関係のある訴訟についての法務総裁の権限等に関する法律6条1項に法務総裁が行政庁を指揮することができるというのは、国の代表者としてする訴訟に関してのことである。両者は全く別個の問題についての法規であって、所論のように一般法特別法の関係にあるのではない。従って法務総裁が後者の法律(6条2項)に基き訴訟を行わせるために所部の職員を指定する権限を、前者の法条を論拠として否認することはできない。それ故原判決が、法務総裁から被控証人の訴訟代理人に指定された環昌一外2名を訴訟代理人として適格であるとしたことには所論のような違法はなく、論旨は理由がない。

上告理由2乃至7について

しかし、憲法32条の「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」との規定は、刑事においては、訴追に基いて、被告人として裁判所の審判を受ける権利を奪われないことをいうものであって、国家機関でない私人である被害者又は一般人に訴追の権利を享有行使せしめる、いわゆる、被害者訴追主義又は一般訴追主義を保障した規定ではない。わが憲法上刑事訴追を国家に帰属せしめ国家機関をして行使せしめる、いわゆる、国家訴追主義を採るべきか又は私人訴追主義をも認むべきかは立法機関に()かされた立法政策の問題である。そして、わが訴訟法は刑訴247条において、「公訴は、検察官がこれを行う。」ものと規定して、原則として国家訴追主義のみを採用し、ただ同法262条乃至(ないし)268条においてその例外を認めているに過ぎないのであって、右例外の場合を除く外犯罪により害を被った者は告訴(又は請求)をし、また、一般私人は告発をして、単に、検察官の公訴の職権発動を促し得るに過ぎないのである。

わが国法上検察官の不起訴処分に対してはその監督官に対し抗告をするか若しくは検察審査会に対しその処分の当否の審査を申し立て得るに過ぎないのであって、民事訴訟乃至行政訴訟を提起することは許さないのである。されば、原判決が本訴請求を(ひっ)(きょう)請求自体裁判所の裁判権のない事項を目的とするものとして却下する旨の結論を()(まで)の判決理由の説明は、結局正当であって、原判決には所論の違憲違法はこれを認めることができない。それ故、論旨は、いずれもその理由がない。

以上説明するように本件上告は理由がないからこれを棄却することとし、民事訴訟法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

タイトルとURLをコピーしました