当罰的行為とは、刑罰という制裁を加えることが相当とされる行為をいいます。
刑法は、法益を保護するために、刑罰という制裁が加えられることがあることを予告することによって、法益を侵害する行為が行われないように人の行為を規制していますが、およそ法益を侵害する行為であれば刑罰という制裁を加えることができるとすることは、かえって法益の保護に反する事態を招くことになります。
つまり、一般的にとるに足りないと思われるような法益侵害行為に対しても、それが法益を侵害するものである以上、刑罰を科することを可能とすることは、人の行動の自由を過度に侵害することになってしまいます。
また、刑罰という制裁は、これが一旦加えられると、経済的(例えば、職を失うなど)・精神的(例えば、社会から隔絶された環境に置かれるなど)・社会的(例えば、公民権の停止を受ける(公選法11条)など)に大きな不利益を被る過酷なものなので、刑罰が科される法益侵害行為は、そのような不利益を被るのに見合ったものでなければなりません。
そこで、刑法は、法益侵害行為のうち、刑罰という過酷な制裁を科すことになってもやむを得ないといえる行為のみを取り出して、処罰の対象としています。