捜 査
捜査の端緒
告 訴
- 最判昭22.11.24 昭和22年(れ)第50号:強姦未遂 刑集1巻21頁
被害者が検察官に対し、「告訴はしません」という語句を使用しても、その陳述全体の趣旨が犯罪事実を申告するとともに犯人の処罰を望むものであるときは、親告罪の告訴として有効である。 - 大阪高判昭26.2.5 昭和25年(う)第2350号:住居侵入強姦未遂被告事件 高刑集4巻2号100頁
検察事務官が告訴調書を作成しても、それで適法な口頭による告訴があったといえない。 - 高松高判昭27.4.24 昭和25年(う)第1244号:強制猥褻被告事件 高刑集5巻8号1193頁
強姦未遂の事実には、これよりも軽い強制猥褻の事実も含まれているので、強姦未遂についての告訴は、強制猥褻についての告訴としても効力を有する。 - 最大判昭27.12.24 昭和25年(オ)第131号:不当処分取消並びに憲法擁護尊重義務履行等請求 民集6巻11号1214頁
告訴・告発・請求があっても、検察官は、公訴提起の義務を負わない。 - 最決昭32.9.26 昭和31年(あ)第4628号:強姦 刑集11巻9号2376頁
強姦の被害者が、告訴当時13才11月で中学2年生であっても、告訴の訴訟能力を有すると認められる。 - 最決昭34.2.6 昭和31年(あ)第3265号:強制猥褻 刑集13巻1号49頁
被害者の親権者が2人あるときは、各自が刑訴法231条1項の被害者の法定代理人として、告訴をすることができる。 - 東京高判昭35.2.11 昭和34年(う)第1529号:強姦未遂被告事件 高刑集13巻1号47頁
電話による告訴は、口頭による告訴として有効とはならない。 - 最決昭35.12.27 昭和34年(あ)第2368号:横領、器物損壊 刑集14巻14号2229頁
地方公共団体(長)も適法な告訴権を有する。
告 発
- 最大判昭24.6.1 昭和23年(れ)第1951号:昭和22年政令第328号違反、議院に於ける証人の宣誓及び証言等に関する法律違反 刑集3巻7号901頁
議院における偽証罪等の告発について特に議院証言法で特別の規定を設けたのは、議院内部のことは議院の自治問題として取り扱うという趣旨なので、同罪については、告発が起訴条件となる。 - 最決昭34.3.12 昭和33年(あ)第1445号:酒税法違反、アルコール専売法違反 刑集13巻3号302頁
告発書には、犯罪事実を申告し、その捜査及び訴追を求める意思が表示されていれば足りる。 - 最判平4.9.18 昭和61年(あ)第1297号:外国為替及び外国貿易管理法違反、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反 刑集46巻6号355頁
告発が、1罪の一部分についてなされた場合、告発の効力は、1罪の全部に及ぶ。
公 訴
- 最決昭25.6.8 昭和25年(あ)第104号:住居侵入、窃盗 刑集4巻6号972頁
起訴状の公訴事実中に「屋内に侵入し」と記載されてはいるが罪名は単に窃盗と記載され罰条として刑法235条のみが示されているにすぎない場合において、住居侵入の事実について裁判官の釈明も検察官による訴因の追加もないのに、住居侵入の犯罪事実を認定し、同法130条を適用することは、審判の請求を受けない事件について判決をしたことになり、違法である。
証拠法
証拠一般
- 最判昭23.8.5 昭和23年(れ)第441号:窃盗 刑集2巻9号1123頁
訴訟上の証明は、自然科学者の用いるような、実験に基づく「真実」そのものを目標とする論理的証明ではなく、「真実」の高度な蓋然性をもって満足する歴史的証明であり、通常人なら誰でも疑いを差し挟まない程度に真実らしいとの確信を得ることで証明ができたとするものである。論理的証明に対しては、当時の科学水準においては反証の余地は存在し得ないが、歴史的証明に関しては、通常、反証の余地が残されている。 - 最決平19.10.16 平成19年(あ)第398号:爆発物取締罰則違反、殺人未遂被告事件 刑集61巻7号677頁
有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」というのは、反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく、抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても、健全な社会常識に照らしてその疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には有罪認定を可能とする趣旨であり、このことは、直接証拠によって事実認定をすべき場合と情況証拠によって事実認定をすべき場合とで異ならない。
自 白
- 最大判昭24.5.18 昭和23年(れ)第77号:殺人、同未遂 刑集3巻6号734頁
自白を補強すべき証拠は、犯罪事実の全部にわたることを必要とせず、自白に係る犯罪が現実に行われたことが裏付けられ、自白が架空のものでないことが確かめられれば足りる。 - 最大判昭24.11.2 昭和23年(れ)第1382号:殺人、住居侵入 刑集3巻11号1691頁
被告人の公判廷外の自白と補強証拠によって犯行事実を認定することができる場合は、被告人が犯人であることについての証拠は自白のみで足り、補強証拠を要しない。