憲法判例

憲法判例

最大判昭25.9.27 昭和24年(れ)第2591号:教育委員会委員選挙罰則違反 刑集4巻9号1799頁

憲法21条は絶対無制限の言論の自由を保障しているのではなく、公共の福祉のためその時、所、方法等について合理的制限が存することを容認しているものといえるから、選挙の公正を期するため戸別訪問を禁止した結果として、言論自由の制限をもたらすことがあったしても、憲法に違反するものということはできない。
憲法判例

憲法判例

憲法を学習していくうえで必要となる重要判例をまとめています。判例は、原則としてそのまま引用していますが、読みやすくするため、以下のような修正を施しています。促音・拗音の表記になっていない箇所は、促音・拗音の表記に修正しています。漢数字は算用数字で表記するようにしています。適宜漢字にふりがなをふっています。適宜見出しをつけています。目次を付けています。要約を付けています。
憲法判例

最判昭56.4.14(前科照会事件) 昭和52年(オ)第323号:損害賠償等 民集35巻3号620頁

前科及び犯罪経歴は人の名誉・信用に直接関わる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する一方で、前科等の有無が訴訟等の重要な争点となっていて、市区町村長に照会して回答を得るのでなければ他に立証方法がないような場合には、裁判所から前科等の照会を受けた市区町村長は、これに応じて前科等につき回答をすることができるが、弁護士法の規定に基づく弁護士会からの照会に漫然と応じて犯罪の種類・軽重を問わず、前科等の全てを報告することは、公権力の違法な行使に当たる。
憲法判例

最判平6.2.8(ノンフィクション「逆転」事件) 平成1年(オ)第1649号:慰藉料 民集48巻2号149頁

ある者が刑事事件について公訴提起されて有罪判決を受け、服役したという事実は、その者の名誉あるいは信用に直接に関わる事項であるから、その者は、みだりに前科等に関わる事実を公表されないことにつき、法的保護に値する利益を有し、また、有罪判決を受けた後あるいは服役を終えた後においては、一市民として社会に復帰することが期待されるので、その者は、前科等に関わる事実の公表によって、新しく形成している社会生活の平穏を害されその更生を妨げられない利益を有する。
憲法判例

最大決昭44.11.26(博多駅テレビフィルム提出命令事件) 昭和44年(し)第68号:取材フィルム提出命令に対する抗告棄却決定に対する特別抗告 刑集23巻11号1490頁

報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障の下にあり、報道のための取材の自由も、同条の精神に照らし、十分尊重に値する。報道機関の取材フィルムに対する提出命令が許容されるか否かは、審判の対象とされている犯罪の性質、態様、軽重及び取材したものの証拠としての価値、公正な刑事裁判を実現するに当たっての必要性の有無を考慮するとともに、これによって報道機関の取材の自由が妨げられる程度、これが報道の自由に及ぼす影響の度合その他諸般の事情を比較衡量して決せられるべきであり、これを刑事裁判の証拠として使用することがやむを得ないと認められる場合でも、それによって受ける報道機関の不利益が必要な限度を超えないように配慮されなければならない。
憲法判例

最判昭56.4.16(月刊ペン事件) 昭和55年(あ)第273号:名誉毀損 刑集35巻3号84頁

私人の私生活上の行状であっても、その携わる社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによっては、その社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として、「公共の利害に関する事実」(刑法230条の2第1項)に当たり得る。「公共の利害に関する事実」(刑法230条の2第1項)に当たるか否かは、摘示された事実自体の内容・性質に照らして客観的に判断されるべきであり、これを摘示する際の表現方法や事実調査の程度などは、公益目的の有無の認定等に関して考慮されるべきことがらであって、摘示された事実の公共性の有無の判断を左右するものではない。
憲法判例

最大判昭44.6.25(夕刊和歌山時事事件) 昭和41年(あ)第2472号:名誉毀損 刑集23巻7号975頁

刑法230条の2の規定は、人格権としての個人の名誉の保護と、憲法21条による正当な言論の保障との調和をはかったものであり、両者間の調和と均衡を考慮すると、刑法230条の2第1項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料・根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損罪(刑法230条1項)は成立しない。
憲法判例

最大判昭25.3.15 昭和24年(れ)第731号: 強姦致傷、窃盗 刑集4巻3号355頁

裁判所が証人尋問中に被告人を退廷させても、尋問終了後に被告人を入廷させたうえで証言の要旨を告げて証人尋問を促し、かつ、被告人が退廷している間、弁護人が終始尋問に立ち会って補充尋問もした場合は、被告人が証人に対して審問する機会を十分に与えなかったものということはできず、証人審問権を保障した憲法37条2項前段に違反しない。
憲法判例

最大判昭30.4.6(帝銀事件) 昭和26年(れ)第2518号:強盗殺人、同未遂、殺人予備、私文書偽造、偽造私文書行使、詐欺、詐欺未遂 刑集9巻4号663頁

現在我が国が採用している方法による絞首刑は、憲法36条にいう「残虐な刑罰」に当たらない。
憲法判例

最判平18.6.20(光市母子殺害事件) 平成14年(あ)第730号:殺人、強姦致死、窃盗被告事件 集刑289号383頁

①犯行の罪質、②動機、③態様(殊に殺害の手段方法の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(殊に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合には、特に酌量すべき事情がない限り、死刑を選択するほかない。