最判昭31.12.28 昭和29年(あ)第2657号:たばこ専売法違反 刑集10巻12号1812頁

judgment 刑法判例
この記事は約4分で読めます。
Sponsored Link
Sponsored Link

要 約

追徴額は、現実の取引違反の価額ではなく、その物件の客観的に適正と認められる価額よる。

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

弁護人天野末治の上告趣意中判例違反を主張する点について

たばこ専売法75条※1は、犯則物件またはこれに(かわ)るべき価額が犯則者の手に存することを禁止するとともに、国が、たばこの専売を独占し、もって国の財政収入を確保するためとくに、必要没収、必要追徴の規定を設け、不正たばこの販売などの取締を厳に励行しようとする趣旨であると解せられるから、同法75条2項にいわゆるその価額の追徴とは、現実の取引違反の価額の如何(いかん)にかかわらず、その物件の客観的に適正な価額の追徴を意味し、当該物件が日本専売公社によって定価の公示された製造たばこ(輸入製造たばこを含む)にあたると認められるものについては、その価格により、公示された定価のないものについては、客観的に適正と認められる価額によるとするのを相当とする。

原判決は、たばこ専売法75条2項の「価額」とは、犯行時の時価と解すべきところ、昭和26年12月29日日本専売公社公示10号により昭和27年1月1日以降ラッキー・ストライクの小売価格は20本入1箱130円と公示されているので、特段の事情のない限り昭和27年1月1日以降はこれを時価と解すべきであるとして、被告人Aより同被告人が昭和27年2月10日頃から同年7月10日頃までの間に輸入製造たばこラッキー・ストライク合計770個を不法に所持した事実につき1箱130円の小売価格で算出した10万100円を追徴し、被告人Bより同被告人が昭和26年11月10日頃から同年12月29日頃までの間に前同様のラッキー・ストライク合計250個を不法に所持した事実につき第1審判決挙示の証拠により1箱80円の価格を時価と認められるとして、この割合で算出した2万円と昭和27年1月2日頃から同年7月13日頃までの間に前同様のラッキー・ストライク合計662個を不法に所持した事実につき1箱130円の右小売価格で算出した8万6,060円を合計した10万6,060円を追徴する旨の言渡をした第1審判決を是認したものであることが、その判(もん)上明らかである。そして、原判決は、たばこ専売法75条2項の価額を犯行時の時価、すなわち犯行時の相場、もしくは犯行時の市価と解すべきとしていること前示のとおりであって、前段の説示と一致していないけれども、同判決は、当該物件が日本専売公社によって定価の公示された製造たばこにかかるものについては、その小売価格を時価と解するとしており、また第1審判決挙示の証拠によると、被告人Bが不法に所持し、日本専売公社によって公示された定価のない右ラッキー・ストライク250個の客観的に適正な価格は1箱80円であると認められるから、原判決が前記のように1箱80円をもって時価と認めるとしたのは、前段に説示したところと結論において(ことな)るところがない。してみれば原判決は、論旨引用の名古屋高等裁判所判決と相反する判断をした違法があるけれども、右の違法は判決に影響を及ぼさないことが明らかであり、原判決を維持するのを相当であると認められるから、論旨は採用でない(なお、所論引用の名古屋高等裁判所判決は、本判決に牴触するかぎり判例としての効力を失ったものである)。

その余の論旨は、量刑不当と事実誤認を前提とする法令違反の主張であって、刑訴405条※2の上告理由にあたらない。

よって同410条1項※3(ただし)書に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。


※1 たばこ専売法75条(昭和60年廃止)
1項
 第71条、第72条第1項若しくは第2項又は第73条第4号から第7号までの犯罪に係るたばこ、たばこ種子、たばこ苗、葉たばこ、製造たばこ、葉たばこ若しくは製造たばこのくず、巻紙、製造たばこの代用品、その原料又は製造たばこ、巻紙若しくは製造たばこの代用品の製造用器具機械は、没収する。
2項
 前項の物件を他に譲り渡し、若しくは消費したとき又は他にその物件の所有者があって没収することのできないときは、その価額を追徴する。
>>本文に戻る


※2 刑訴法405条
 高等裁判所がした第1審又は第2審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の(もうし)(たて)をすることができる。
1号
 憲法の違反があること又は憲法の解釈に(あやまり)があること。
2号
 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
3号
 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
>>本文に戻る


※3 刑訴法410条1項
 上告裁判所は、第405条各号に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。但し、判決に影響を及ぼさないことが明らかな場合は、この限りでない。
>>本文に戻る

タイトルとURLをコピーしました