要 約
旧関税法(昭和23年法律第107号により改正された明治32年第61号)83条にいう「犯人」には、両罰則定の適用を受けるべき「法人」又は「人」をも含む。
主 文
本件各上告を棄却する。
理 由
被告人A、同B、同C、同D、同E、同F電器貿易株式会社、同Gの弁護人幸節静彦、同内藤正剛の上告趣意第1点は、原判示に副わない事実を前提とする憲法違反の主張であり、同第2点ないし第5点は、事実誤認と単なる訴訟法違反または法令違反の主張を出でないものであって、すべて刑訴405条所定の上告理由に当らない。
被告人A、同B、同C、同D、同E、同F電器貿易株式会社、同Gの弁護人内藤正剛、同佐伯千仭の上告趣意第1点について
所論は、違憲をいうが、その実質は法令違反の主張に帰するものであって、上告適法の理由にならない。そして、昭和23年法律107号により改正された明治32年法律61号関税法(以下旧関税法という。)83条にいう「犯人」には、両罰規定の適用を受くべき「法人」又は「人」をも含むものと解するのを相当とし、本件のごとき場合には、被告人F電気貿易株式会社に対し、旧関税法82条の3、76条1項の罰金のほかに、没収、追徴をも言い渡すことができることは、同法83条、刑法8条、9条、20条の各規定の趣旨に照らし疑いのないところである(なお、たばこ専売法違反被告事件につき、昭和32年(あ)第2199号、同33年5月24日言渡第一小法廷決定、刑集12巻8号1611頁参照)。されば、原判決が、右被告人会社に対し旧関税法83条1、3項を適用して所論没収、追徴の言渡をしたことは正当であるから、論旨は採用できない。
同第2点は、事実誤認、単なる訴訟法違反の主張に帰するものであって、刑訴405条の上告理由に当らない。
被告人A、同F電器貿易株式会社、同C、同D、同E、同B、同Gの弁護人内藤正剛、同田島順の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反(訴訟法違反を含む)の主張にほかならないものであって、刑訴405条の上告理由に当らない。
被告人Hの弁護人田村堅三、同西風静子の上告趣意は、違憲をいう点もあるが、実質は結局事実誤認、単なる訴訟法違反の主張に帰するものであって、刑訴405条の上告理由に当らない。
被告人Bの上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反(訴訟法違反を含む)の主張であって、刑訴405条の上告理由に当らない。
また記録を調べても同411条を適用すべきものとは認められない。
よって同408条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。