刑法判例

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最決昭40.5.20 昭和39年(あ)第2484号:売春防止法違反 集刑155号771頁

売春防止法13条2項によって懲役刑に併科すると定められた罰金刑は、刑罰であって没収又は追徴とはその性質を異にするから、被告人に罰金刑が併科された場合においても、罰金刑が併科された行為により取得した家賃相当額を報酬物件として刑法19条1項3号、19条の2によって追徴することができ、かつ、その際いわゆる適正賃料額を控除することを要しない。
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最大判昭32.11.27 昭和26年(あ)第1897号:関税法違反 刑集11巻12号3132頁

旧関税法83条第1項(昭和23年法律第107号により改正された明治32年法律第61号)は、犯人以外の第三者たる同条所定の貨物又は船舶の所有者が、貨物について同条所定の犯罪行為が行われること又は船舶が同条所定の犯罪行為の用に供せられることをあらかじめ知っており、その犯罪が行われた時から引き続きその貨物又は船舶を所有していた場合に、その貨物又は船舶を没収できるとする趣旨であり、同条所定の貨物又は船舶が犯人の占有に係るものであれば、所有者の善意・悪意に関係なく没収すべき旨を定めたものではない。
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最大決昭38.5.22 昭和34年(あ)第126号:関税法違反、物品税法違反、贈賄、公正証書原本不実記載、同行使 刑集17巻4号457頁

関税法118条は、同条所定の犯罪行為の犯人に対して没収又は追徴を科すること規定しているが、同条にいう「犯人」には、行為者のみならず、両罰規定によって処罰される法人又は人も含まれる。
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東京高判昭27.7.3 昭和27年(う)第306号:窃盗業務妨害被告事件 高刑集5巻7号1134頁

業務妨害罪によって保護される法益は、事実上平穏に行われている一定の業務なので、その業務が開始される原因となった契約が民法上有効であることや、その業務に関する行政上の許可が存在することは、必ずしもその業務ということの要件ではない。
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最決昭59.3.23 昭和57年(あ)第987号:威力業務妨害 刑集38巻5号2030頁

弁護士からその業務にとって重要な書類が在中するかばんを奪だっ取しゅして隠匿とくする行為は、刑法234条にいう「威力を用い」た場合に当たる。
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最決平4.11.27 平成4年(あ)第267号:威力業務妨害 刑集46巻8号623頁

被害者の事務机引き出し内に赤く染めた猫の死がいを入れておくなどして、被害者にこれを発見させ、畏怖させるに足りる状態におく行為は、威力業務妨害罪(刑法234条)の「威力」に当たる。
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東京高判昭28.2.21(インチキブンヤ事件)  昭和27年(う)第2626号:名誉毀損被告事件 高刑集6巻4号367頁

刑法230条の2の真実性の証明について、裁判所が諸般の証拠を取調べ、真相の究明に努力したにもかかわらず、事実の真否が確定されなかったときは、被告人は不利益な判断を受けるという意味において、被告人は事実の証明に関し挙証責任を負うものということができる。
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最判昭28.1.30 昭和25年(れ)第1864号:住居侵入、業務妨害 刑集7巻1号128頁

威力業務妨害罪(刑法234条)にいう「威力」とは、犯人の威勢、人数及び四囲の状勢からみて被害者の自由意思を制圧するに足りる勢力をいい、「業務を妨害した」とは、具体的な個々の現実に執行している業務の執行を妨害する行為のみならず、被害者の当該業務における地位に鑑み、その遂行すべき業務の経営を阻害するに足りる一切の行為をいう。
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最決平14.9.30 平成10年(あ)第1491号:威力業務妨害被告事件 刑集56巻7号395頁

東京都が都道である通路に動く歩道を設置するため、通路上に起居する路上生活者に対して自主的に退去するよう説得して退去させた後、通路上に残された段ボール小屋等を撤去することなどを内容とする環境整備工事は、強制力を行使する権力的公務ではないから、威力業務妨害罪にいう「業務」に当たり、このことは、自主的に退去しなかった路上生活者が警察官によって排除、連行された後、その意思に反して段ボール小屋を撤去した場合であっても、異ならない。また、同工事が公共目的に基づくものであるのに対し、路上生活者は通路を不法に占拠していた者であり、行政代執行の手続を採ってもその実効性が期し難かったことなど判示の事実関係の下では、威力業務妨害罪としての要保護性を失わせるような法的瑕疵を有しない。
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最判平23.7.7 平成20年(あ)第1132号:威力業務妨害被告事件 刑集65巻5号619頁

卒業式の開式直前に、式典会場である体育館において、主催者に無断で、保護者らに対して、国歌斉唱のときには着席してほしいなどと大声で呼び掛けを行い、これを制止した教頭らに対して怒号するなどし、その場を喧噪状態に陥れるなどして、卒業式の円滑な遂行に支障を生じさせた行為をもって、威力業務妨害罪(刑法234条)に問うことは、憲法21条1項に違反しない。