判 例

刑法判例

最判昭33.4.10 昭和31年(あ)第3359号:名誉毀損 刑集12巻5号830頁

言論の自由(憲法21条1項)の保障は絶対無制約ではなく、人の名誉を毀損する記事を新聞紙に掲載し、これを頒布して他人の名誉を毀損することは、言論の自由の濫用として、憲法の保障する言論の自由の範囲内に属するものと認めることができない。
刑法判例

最大判昭39.7.1 昭和37年(あ)第1243号:関税法違反 刑集18巻6号290頁

旧関税法(昭和29年法律第61号による改正前のもの)83条3項にいう犯人とは、犯罪貨物の所有者又は占有者であった者に限らず、当該犯罪に関与した全ての犯人を含み、犯罪貨物の没収ができないときは、犯罪貨物の所有者又は占有者でなかった者に対しても、その価格に相当する金額を追徴することができる。
刑法判例

最決昭40.5.20 昭和39年(あ)第2484号:売春防止法違反 集刑155号771頁

売春防止法13条2項によって懲役刑に併科すると定められた罰金刑は、刑罰であって没収又は追徴とはその性質を異にするから、被告人に罰金刑が併科された場合においても、罰金刑が併科された行為により取得した家賃相当額を報酬物件として刑法19条1項3号、19条の2によって追徴することができ、かつ、その際いわゆる適正賃料額を控除することを要しない。
刑法判例

最大判昭32.11.27 昭和26年(あ)第1897号:関税法違反 刑集11巻12号3132頁

旧関税法83条第1項(昭和23年法律第107号により改正された明治32年法律第61号)は、犯人以外の第三者たる同条所定の貨物又は船舶の所有者が、貨物について同条所定の犯罪行為が行われること又は船舶が同条所定の犯罪行為の用に供せられることをあらかじめ知っており、その犯罪が行われた時から引き続きその貨物又は船舶を所有していた場合に、その貨物又は船舶を没収できるとする趣旨であり、同条所定の貨物又は船舶が犯人の占有に係るものであれば、所有者の善意・悪意に関係なく没収すべき旨を定めたものではない。
刑法判例

最大決昭38.5.22 昭和34年(あ)第126号:関税法違反、物品税法違反、贈賄、公正証書原本不実記載、同行使 刑集17巻4号457頁

関税法118条は、同条所定の犯罪行為の犯人に対して没収又は追徴を科すること規定しているが、同条にいう「犯人」には、行為者のみならず、両罰規定によって処罰される法人又は人も含まれる。
刑法判例

東京高判昭27.7.3 昭和27年(う)第306号:窃盗業務妨害被告事件 高刑集5巻7号1134頁

業務妨害罪によって保護される法益は、事実上平穏に行われている一定の業務なので、その業務が開始される原因となった契約が民法上有効であることや、その業務に関する行政上の許可が存在することは、必ずしもその業務ということの要件ではない。
刑法判例

最決昭59.3.23 昭和57年(あ)第987号:威力業務妨害 刑集38巻5号2030頁

弁護士からその業務にとって重要な書類が在中するかばんを奪だっ取しゅして隠匿とくする行為は、刑法234条にいう「威力を用い」た場合に当たる。
刑法判例

最決平4.11.27 平成4年(あ)第267号:威力業務妨害 刑集46巻8号623頁

被害者の事務机引き出し内に赤く染めた猫の死がいを入れておくなどして、被害者にこれを発見させ、畏怖させるに足りる状態におく行為は、威力業務妨害罪(刑法234条)の「威力」に当たる。
刑法判例

東京高判昭28.2.21(インチキブンヤ事件)  昭和27年(う)第2626号:名誉毀損被告事件 高刑集6巻4号367頁

刑法230条の2の真実性の証明について、裁判所が諸般の証拠を取調べ、真相の究明に努力したにもかかわらず、事実の真否が確定されなかったときは、被告人は不利益な判断を受けるという意味において、被告人は事実の証明に関し挙証責任を負うものということができる。
刑事訴訟法判例

最判昭23.8.5 昭和23年(れ)第441号:窃盗 刑集2巻9号1123頁

訴訟上の証明は、自然科学者の用いるような、実験に基づく「真実」そのものを目標とする論理的証明ではなく、「真実」の高度な蓋然性をもって満足する歴史的証明であり、通常人なら誰でも疑いを差し挟まない程度に真実らしいとの確信を得ることで証明ができたとするものである。論理的証明に対しては、当時の科学水準においては反証の余地は存在し得ないが、歴史的証明に関しては、通常、反証の余地が残されている。