禁 錮

imprisonment_without_work 刑法総論
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禁錮や懲役という言葉は、日々のニュースや各種のメディア等でよく耳にしたことがある人が多いとは思いますが、犯罪者が刑務所に数年間入るというイメージ以上に、具体的にどのような刑罰なのか説明できる人はそう多くはないと思います。

そこで、禁錮とはどのような刑罰なのか、懲役との違いに留意しながら解説していきます。

1 意 義

禁錮とは、受刑者を拘禁してその自由を剥奪することを内容とする自由刑の一種です。

総じて、政治犯ないし確信犯的な犯罪(例えば、内乱罪(刑法77条)などです。)や過失犯(例えば、業務上過失致死傷罪(刑法211条前段)などです。)について、法定刑として定められています。

刑法77条(内乱)

1項
 国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
1号
 首謀者は、死刑又は無期禁錮に処する。
2号
 謀議に参与し、又は群衆を指揮した者は無期又は3年以上の禁錮に処し、その他諸般の職務に従事した者は1年以上10年以下の禁錮に処する。
3号
 付和随行し、その他単に暴動に参加した者は、3年以下の禁錮に処する。
2項
 前項の罪の未遂は、罰する。ただし、同項第3号に規定する者については、この限りでない。

刑法211条前段(業務上過失致死傷等)

業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。

2 期 間

禁錮には、無期と有期があります。

⑴ 無 期

無期とは、刑期を定めないという意味ではなく、「終生ないし終身という期限がある」(大塚仁・河上和雄・中山善房・古田佑紀編『大コンメンタール刑法』第三版(第1巻)、青林書院、2015年、p.366)と解されています。

ただし、禁錮に処せられた者に改(しゅん)の情があるときは、10年経過後において、行政官庁(=地方更生保護委員会)の決定により仮釈放が許されることになっており(刑法28条、更生保護法39条1項)、おおむね30年を経過した頃に仮釈放が認められる場合が多くなっています(西田典之著、橋爪隆補訂『刑法総論』第3版、弘文堂、2019年、p.13参照)

刑法28条(仮釈放)

懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の3分の1を、無期刑については10年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。

更生保護法39条1項(仮釈放及び仮出場を許す処分)

刑法第28条の規定による仮釈放を許す処分及び同法第30条の規定による仮出場を許す処分は、地方委員会の決定をもってするものとする。

したがって、実際の運用としては、終身刑とは異なります。

無期の禁錮は、終身刑とは異なる。

⑵ 有 期

有期は、1(げつ)以上20年以下です(刑法13条1項)。

刑法13条1項(禁錮)

禁錮は、無期及び有期とし、有期禁錮は、1月以上20年以下とする。

例えば、法定刑が「10年以下の禁錮」や「5年以上の有期禁錮」と定められている場合は、正確には、それぞれ「1月以上10年以下の禁錮」、「5年以上20年以下の禁錮」となります。

ただし、刑を加重する場合には長期を30年にまで上げることができ、減軽する場合には短期を1月未満に下げることができます(刑法14条2項)。

刑法14条2項(有期の懲役及び禁錮の加減の限度)

有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては30年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては1月未満に下げることができる。

なお、禁錮に処せられた者に改悛の情があるときは、刑期の3分の1を経過した後において、行政官庁(=地方更生保護委員会)の決定により仮釈放が許されることになっており(刑法28条、更生保護法39条1項)、おおむね刑期の80%を経過した頃に仮釈放が認められる場合が多くなっています(西田典之著、橋爪隆補訂『刑法総論』第3版、弘文堂、2019年、p.13参照)

有期の禁錮は1月以上20年以下

3 執行方法

刑事施設(=刑務所、少年刑務所)に拘置して執行されます(刑法13条2項、少年法56条1項)。

刑法13条2項(禁錮)

禁錮は、刑事施設に拘置する。

少年法56条1項(懲役又は禁錮の執行)

懲役又は禁錮の言渡しを受けた少年(第3項の規定により少年院において刑の執行を受ける者を除く。)に対しては、特に設けた刑事施設又は刑事施設若しくは留置施設内の特に分界を設けた場所において、その刑を執行する。

なお、16歳未満の少年が禁錮の実刑を言い渡された場合は、16歳に達するまでの間、刑事施設ではなく少年院に収容して禁錮の刑を執行することができます。その場合は、矯正教育がなされます(少年法56条3項)。

少年法56条3項(懲役又は禁錮の執行)

懲役又は禁錮の言渡しを受けた16歳に満たない少年に対しては、刑法第12条第2項又は第13条第2項の規定にかかわらず、16歳に達するまでの間、少年院において、その刑を執行することができる。この場合において、その少年には、矯正教育を授ける。

懲役とは異なり、所定の作業(=刑務作業)は課されませんが、受刑者が申し出た場合は、刑事施設の長は、作業を行うことを許すことができます(刑事収容施設法93条)。これを請願作業といいます。

刑事収容施設法93条(禁錮受刑者等の作業)

刑事施設の長は、禁錮受刑者(刑事施設に収容されているものに限る。以下この節において同じ。)又は拘留受刑者(刑事施設に収容されているものに限る。)が刑事施設の長の指定する作業を行いたい旨の申出をした場合には、法務省令で定めるところにより、その作業を行うことを許すことができる。

4 他の自由刑との相違

自由刑としては、懲役のほかに懲役・拘留がありますが、それぞれ以下のような違いがあります。

  • 期 間
    無期懲役・禁錮:終身
    有期懲役・禁錮:1月以上20年以下(刑法12条1項、13条1項)
    拘留:1日以上30日未満(刑法16条)
  • 刑務作業を行う義務の有無
    懲役:あり(刑法12条2項)
    禁錮・拘留:なし(受刑者が申し出た場合は、刑事施設の長は、作業を行うことを許すことができます(刑事収容施設法93条)。)
  • 法律上の加重事由の有無
    無期懲役・禁錮:なし
    有期懲役:併合罪加重(刑法47条)、累犯加重(刑法57条、59条)
    有期禁錮:併合罪加重
    拘留:なし
  • 法律上の減軽事由がある場合
    無期懲役・禁錮:7年以上の有期の懲役・禁錮となります(刑法68条2号)。
    有期懲役・禁錮:長期及び短期の2分の1を減じます(刑法68条3号)。
    拘留:長期の2分の1を減じます(刑法68条5号)。
  • 刑の執行猶予の有無
    懲役・禁錮:あり(刑法25条1項、27条の2第1項)
    拘留:なし
  • 刑の執行猶予及び仮釈放の取消し事由となるか
    懲役・禁錮:なり得る(刑法26条1号、27条の4第1号、29条1項1号)。
    拘留:ならない。
  • 法令上の資格制限の有無
    懲役・禁錮:あり(医師法4条3号、歯科医師法4条3号など)
    拘留:なし

禁錮・拘留には刑務作業を行う義務がないが、懲役にはある。

5 確認問題

禁錮については一通り説明したので、試しに問題を解いてみましょう。

⑴ 平成25年度 司法試験 短答式試験 刑事系科目 第9問

刑罰に関する次のアからオまでの各記述を検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。

ア.自由刑には、懲役、禁錮及び労役場留置が含まれる。

イ.財産刑には、罰金、没収及び追徴が含まれる。

ウ.有期の懲役又は禁錮は、1月以上15年以下であり、これを加重する場合においては30年にまで上げることができる。

エ.有期の懲役又は禁錮を減軽する場合においては1月未満に下げることができる。

オ.懲役は、受刑者を刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる刑罰であり、禁錮は、受刑者を刑事施設に拘置する刑罰である。

法務省「平成25年司法試験問題」短答式試験(刑事系科目)

⑵ 解 説

アについて

刑罰は、死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料没収の7種で、労役場留置は刑罰ではありません。

したがって、アは誤りということになります(詳細については、「こちら」を参照してください。)。

イについて

刑罰は、死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料・没収の7種で、追徴は刑罰ではありません。

したがって、イは誤りということになります(詳細については、「こちら」を参照してください。)。

ウについて

有期の懲役又は禁錮は、1月以上20年以下です。

したがって、ウは誤りということになります(2⑵及び参照)。

エについて

有期の懲役又は禁錮を減軽する場合は、1月未満に下げることができます(刑法14条2項)。

したがって、エは正しいということになります(2⑵参照)。

オについて

懲役と禁錮とは、いずれも刑事施設に拘置して執行される刑罰であるという点では共通していますが、前者は所定の作業が課されるけれども、後者はそれが課されないと点に違いがあります(刑法12条2項、13条2項)。

刑法12条2項(懲役)

懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる。

したがって、オは正しいです(及び参照)。

⑶ 解 答

この問題の解答は、2-2-2-1-1ということになります。

6 参考文献

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