刑務所

刑務所とは、懲役、禁錮、拘留の刑が確定した受刑者を収容し、必要な処遇を行う施設です。

１　受刑者の処遇

受刑者の処遇（＝矯正処遇等）は、「その者の資質及び環境に応じ、その自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨として行」われます（刑事収容施設法30条）。すなわち、受刑者の改善更生と社会復帰を目的として行われます。

矯正処遇等は、以下の３つで構成されます。

1. 刑執行開始時指導
2. 矯正処遇
3. 釈放前指導

２　刑執行開始時指導

刑執行開始時は、これから受刑生活を送るうえでのルールや処遇内容を指導し、自発的な更生意欲を持たせ、受刑生活を送る意欲を喚起するため、刑の執行開始後の法務省令で定める期間、受刑の意義その他矯正処遇の実施の基礎となる事項並びに刑事施設における生活及び行動に関する指導を行います（刑事収容施設法85条１項１号）。

３　矯正処遇

矯正処遇は、受刑者の円滑な社会復帰を図るため、作業（刑事収容施設法92条、93条）のほか、改善指導（同法103条）・教科指導（同法104条）から構成されます（同法84条１項）。

⑴　作　業

懲役刑の受刑者は、所定の作業（＝刑務作業）を行うことが義務付けられています^※（刑法12条２項）。

刑務作業には、以下の４つの種類があります。

1. 生産作業
   物品を製作する作業及び労務を提供する作業です。
2. 社会貢献作業
   例えば、通学路等の除雪作業や植生保全のための除草作業等です。
3. 職業訓練
   出所後の就労が有利に働くように、受刑者に職業に関する免許・資格や、職業に必要な知識・技能を取得・習得させる作業です。例えば、介護福祉、自動車整備、フォークリフトの運転、溶接等の約50種目に関して行われます。
4. 自営作業
   炊事・洗濯など、受刑者等が矯正施設で生活するに当たって必要な作業です。

刑務作業に対しては、作業報奨金が原則として釈放時に支給されますが（刑事収容施設法98条１項）、刑務作業は、「受刑者の勤労意欲を高め、これに職業上有用な知識及び技能を習得させるように実施する」（同法94条１項）、改善更生・社会復帰のための矯正処遇の１つなので、作業報奨金は、受刑者の勤労意欲の促進を図り、かつ釈放後の更生資金に充てさせることを目的として、国家が報奨として支給するものであって、労働に対する対価としての賃金ではありません（西田典之・山口厚・佐伯仁志編『注釈刑法　第1巻　総論』有斐閣、2010年、p.79参照）。

注釈刑法　第1巻　総論 §§1～72 （コンメンタール） [ 西田 典之 ]

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⑵　改善指導

犯罪の責任を自覚させ、健康な心身を培わせ、並びに社会生活に適応するのに必要な知識及び生活態度を習得させるため必要な指導を行います（刑事収容施設法103条１項）。

以下の事情を有することにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対しては、その事情の改善に資するよう特に配慮しなければならないこととされています（同条２項）。

1. 麻薬、覚醒剤その他の薬物に対する依存がある。
2. 暴対法２条６号に規定する暴力団員である。
3. その他法務省令で定める事情

⑶　教科指導

社会生活の基礎となる学力を欠くことにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対しては、教科指導（＝学校教育法による学校教育の内容に準ずる内容の指導）を行います（刑事収容施設法104条１項）。

また、学力の向上を図ることが円滑な社会復帰に特に資すると認められる受刑者に対しては、その学力の状況に応じた教科指導を行うことができることとされています（同条２項）。

４　釈放前指導

釈放前には、円滑に社会復帰できるようにするため、社会保障制度等を説明し、また、社会復帰するうえでの心構え等を指導するなど、釈放前における法務省令で定める期間、釈放後の社会生活において直ちに必要となる知識の付与その他受刑者の帰住及び釈放後の生活に関する指導を行います（刑事収容施設法85条１項２号）。

５　全国の刑務所

令和２年４月１日現在、全国には、以下の75の刑務所があります。