最判昭34.5.7 昭和33年(あ)第2698号:名誉毀損 刑集13巻5号641頁

judgment 刑法判例
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要 約

事実を摘示した直接の相手方が特定かつ少数人であっても、その者らを通じて不特定又は多数人に摘示した事実が伝()する可能性がある場合には、公然と事実を摘示したものと認められる。

摘示事実の真実性が証明されなかった場合には、行為者が摘示した事実について真実であると信じていたとしても、名誉毀損罪が成立する。

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人加藤定蔵の上告趣意第1点および同第2点(イ)について

所論は原判決の憲法21条※1、22条※2、35条※3違反及び大審院の判例違反を主張する。しかし、原判決は第1審判決の認定を維持し、被告人は不定多数の人の視聴に達せしめ得る状態において事実を摘示したものであり、その摘示が質問に対する答としてなされたものであるかどうかというようなことは、犯罪の成否に影響がないとしているのである。そして、このような事実認定の下においては、被告人は刑法230条1項にいう公然事実を摘示したものということがききるのであり、かく解釈したからといってなんら所論憲法各法条の保障する自由を侵害したことにはならないのはもちろん(昭和31年(あ)第3359号、同33年4月10日当小法廷判決・集12巻5号830頁以下参照)、また、所論判例と相反する判断をしたことにもならない。従って、論旨はいずれも採用し難い。

同第2点(ロ)および同第3点について

所論は原判決の東京高等裁判所および大阪高等裁判所の各判例違反をいうけれども、本件記録およびすべての証拠によっても、Hが本件火災の放火犯人であると確認することはできないから、被告人についてはその陳述する事実につき真実であることの証明がなされなかったものというべく、被告人は本件につき刑責を免れることができないのであって、これと同趣旨に出でた原判断は相当であり(昭和31年(あ)第938号、同32年4月4日当小法廷決定を参照)、何ら所論東京高等裁判所の判例と相反するものではなく、所論大阪高等裁判所の判例は右と抵触する限度において改めらるべきものであるから、論旨は採用できない。

同第4点について

所論は単なる訴訟法違反、事実誤認の主張を出でないものであって、刑訴405条※4の上告理由にあたらないし、所論に鑑み記録を調べても、本件につき、同411条1号、3号※5を適用すべき事由ありとは認められない。

よって、同408条※6、410条2項※7(のっと)り、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。


※1 憲法21条
1項
 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2項
 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
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※2 憲法22条
1項
 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2項
 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
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※3 憲法35条
1項
 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に(もとづ)いて発せられ、()つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2項
 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
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※4 刑訴法405条
 高等裁判所がした第1審又は第2審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の(もうし)(たて)をすることができる。
1号
 憲法の違反があること又は憲法の解釈に(あやまり)があること。
2号
 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
3号
 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
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※5 刑訴法411条1号、3号
 上告裁判所は、第405条各号に規定する事由がない場合であっても、左の事由があって原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。
1号
 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。
3号
 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。
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※6 刑訴法408条
 上告裁判所は、上告趣意書その他の書類によって、上告の申立の理由がないことが明らかであると認めるときは、弁論を経ないで、判決で上告を棄却することができる。
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※7 刑訴法410条2項
 第405条第2号又は第3号に規定する事由のみがある場合において、上告裁判所がその判例を変更して原判決を維持するのを相当とするときは、前項の規定は、これを適用しない。
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