刑法判例

刑法判例

最判昭32.2.21 昭和31年(あ)第1864号:威力業務妨害 刑集11巻2号877頁

「威力を用いて」(刑法234条)とは、人の意思を制圧するような勢力を用いれば足り、必ずしも、それが直接現に業務に従事している他人に対してなされることを要しない。
刑法判例

最決平17.3.29 平成16年(あ)第2145号:傷害被告事件 刑集59巻2号54頁

自宅から隣家の住人に向けて、精神的ストレスによる障害を生じさせるかもしれないことを認識しながら、連日連夜、ラジオの音声及び目覚まし時計のアラーム音を大音量で鳴らし続けるなどして、当該住人に精神的ストレスを与え、慢性頭痛症等を生じさせた行為は、傷害罪の実行行為に当たる。
刑法判例

最判昭24.5.28 昭和24年(れ)第562号:強盗殺人、強盗傷人、強盗、住居侵入 刑集3巻6号873頁

犯人以外の者が所有していた物であっても、所有者が返還請求権を放棄した場合には、その物は、犯人以外のものの所有に属しない物とはならず、沒収することができる。
憲法判例

最大判昭24.5.18 昭和22年(れ)第39号:脅迫 刑集3巻6号772頁

勤労者以外の団体又は個人の単なる集合にすぎないものに対してまで、憲法28条の労働基本権の保障は及ばない。また、一般民衆は、法規その他公序良俗に反しない限度で大衆運動を行うことができるが、そうだからといってその運動に関する行為であれば常に刑法35条の正当行為として刑罰法令の適用が排除されるわけではない。 緊急避難(刑法37条1項)にいう「現在の危難」とは、現に危難の切迫していることを意味し、「やむを得ずにした」とは当該避難行為をする以外には他に方法がなく、そのような行動に出たことが条理上肯定し得る場合を意味する。 自救行為とは、例えば、盜犯の現場において被害者が贓物を取り返すような、ある一定の權利を有する者が、これを保全するため官憲の手を待つ暇(いとま)がなく、自ら直ちに必要な限度で適当な行為をすることをいう。
刑法判例

最判昭27.7.25 昭和25年(あ)第1992号:公務執行妨害 刑集6巻7号941頁

「お前を恨んでいる者は俺だけじゃない。何人いるか分からない。駐在所にダイナマイトを仕掛けて爆発させあなたを殺すと言っている者もある」、「俺の仲間はたくさんいてそいつらも君をやっつけるのだと相当意気込んでいる」などと申し向ける場合申し向ける行為は、脅迫行為に当たる。
刑法判例

最判昭26.7.24 昭和25年(れ)第981号:脅迫 刑集5巻8号1609頁

脅迫罪(刑法222条)における害悪の告知は、被害者に対して直接になす必要はなく、被告人おいて脅迫の意思で害悪を加えることを知らしめる手段を施し、被害者が害悪を被ることを知った事実があれば足りる。
刑法判例

最判昭29.6.8 昭和27(あ)第4864号:暴力行為等処罰ニ関スル法律違反 刑集8巻6号846頁

駐在所付近で、「売国奴の番犬、A巡査をたたき出せ」と題し、「来るべき人民裁判によって明らかに裁かれ処断されるであろう」等と記載したビラを付近の住民等に頒布して、住民を通じて同巡査に入手させた場合、その言説内容と公知の客観的姿勢とが相まって、一の具体的・客観的害悪の告知であるといえ、また、普通一般人の誰もが畏怖するものと認められるので、刑法所定の脅迫に当たる。
刑法判例

最判昭35.3.18 昭和34年(あ)第1812号:脅迫 刑集14巻4号416頁

2つの派の抗争が熾烈になっている時期に、一方の派の中心人物宅に、現実に出火もないのに、「出火御見舞申上げます、火の元に御用心」、「出火御見舞申上げます、火の用心に御注意」という趣旨の文面の葉書を発送しこれを配達させたときは、脅迫罪(刑法222条)が成立する。
刑法判例

大阪高判昭61.12.16 昭和61年(う)第381号:暴力行為等処罰ニ関スル法律違反被告事件 高刑集39巻4号592頁

脅迫罪(刑法222条)の保護法益は意思決定の自由であるから、法人の代表者・代理人等に対して、法人の法益に危害を加える旨を告知しても、法人に対する脅迫罪は成立せず、法人に対する加害の告知が、ひいて現にその告知を受けた自然人自身の生命、身体、自由、名誉又は財産に対する加害の告知に当たると評価され得る場合にのみ、その自然人に対する同罪の成立が肯定される。
刑法判例

最判昭30.11.1 昭和28年(あ)第5372号:傷害、暴行、脅迫 集刑 110号79頁

犯人が他人に対し暴行を加えた後、更に別個の害悪を告知し脅迫行為をした場合、それが暴行行為の直後に同一の場所でなされたものであっても、暴行罪(刑法208条)に吸収されず、別に脅迫罪(刑法222条)が成立し、併合罪(刑法45条前段)となる。