要 約
強制力を行使する権力的公務以外の公務は、偽計・威力業務妨害罪(刑法233後段、234条)の業務に当たる。
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人小林俊明の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法405条※1の上告理由に当たらない。
【要旨】なお、本件において妨害の対象となった職務は、公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務であり、右事務は、強制力を行使する権力的公務ではないから、右事務が刑法(平成7年法律第71号による改正前のもの)233条※2、234条※3にいう「業務」に当たるとした原判断は、正当である(最高裁昭和36年(あ)第823号同41年11月30日大法廷判決・刑集20巻9号1076頁、最高裁昭和59年(あ)第627号同62年3月12日第一小法廷決定・刑集41巻2号140頁参照)。
よって、刑訴法414条※4、386条1項3号※5により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
※1 刑訴法405条
高等裁判所がした第1審又は第2審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。
1号
憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。
2号
最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
3号
最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
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※2 刑法233条(信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
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※3 刑法234条(威力業務妨害)
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
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※4 刑訴法414条
前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。
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※5 刑訴法386条1項3号
左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。
3号
控訴趣意書に記載された控訴の申立の理由が、明らかに第377条乃至第382条及び第383条に規定する事由に該当しないとき。
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