1 刑法の意義
刑法とは、犯罪と刑罰に関する法をいいます(=実質的意義の刑法)。つまり、どのような行為が犯罪となり、それに対してどのような刑罰が科せられるのかを定めるルールです(西田典之著、橋爪隆補訂『刑法総論』第3版、弘文堂、2019年、p.5、山口厚『刑法総論』第3版、有斐閣、2016年、p.1参照)。
2 刑法の種類
刑法には、一般刑法と特別刑法があり、刑法(明治40年法律第45号)という名前の付いた法律(=刑法典、形式的意義の刑法)を一般刑法(普通刑法)、それ以外の刑罰法規を特別刑法といい、特別刑法は更に、狭義の特別刑法と行政刑法に分かれます。
狭義の特別刑法とは、刑法典の付属的・補充的性格を有する刑罰法規をいい、以下のようなものがあります。
- 暴力行為等処罰法(大正15年法律第60号)
- 盗犯等防止法(昭和5年法律第9号)
- 軽犯罪法(昭和23年法律第39号)
- 組織的犯罪処罰法(平成11年法律第136号)
- 自動車運転死傷処罰法(平成25年法律第86号) など
行政刑法とは、行政取締り目的で設けられた刑罰法規をいい、以下のようなものがあります。
- 国公法(昭和22年法律第120号)
- 地公法(昭和25年法律第261号)
- 道交法(昭和35年法律第105号)
- 大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)
- 水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号) など
刑法典と狭義の特別刑法とは、当罰的行為の処罰に関わる法として、刑事刑法といいます。
3 犯罪とは
犯罪とは、「構成要件に該当する違法かつ有責な行為」(大谷實『刑法講義総論』新版第5版、成文堂、2019年、p.74)をいいます。
具体的には、殺人罪(刑法199条)、窃盗罪(刑法235条)など、法益の保護にとって有害な行為のうち、刑罰という制裁を加えることが相当とされる行為(=当罰的行為)として刑罰法規に規定された行為をいいます(井田良『講義刑法学・総論』第2版、有斐閣、2018年、p.80、大谷實『刑法講義総論』新版第5版、成文堂、2019年、p.71、西田典之著、橋爪隆補訂『刑法総論』第3版、弘文堂、2019年、p.65参照)。
4 刑罰とは
刑罰とは、「犯罪に対する法律上の効果として、国家によって犯人に科される法益の剥奪」(大谷實『刑法講義総論』新版第5版、成文堂、2019年、p.525)をいいます。つまり、罪を犯した者に対して国家によって科される制裁です(山口厚『刑法総論』第3版、有斐閣、2016年、p.2参照)。
現行刑法では、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収の7種が刑罰として定められており、死刑が生命刑、懲役・禁錮・拘留が自由刑、罰金・科料・没収が財産刑となります(没収が付加刑で、没収以外が主刑となります。)(刑法9条)。
死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。
5 参考文献
- 井田良『講義刑法学・総論』第2版、有斐閣、2018年
- 大谷實『刑法講義総論』新版第5版、成文堂、2019年
- 西田典之著、橋爪隆補訂『刑法総論』第3版、弘文堂、2019年
- 山口厚『刑法総論』第3版、有斐閣、2016年